today's movie column … 【ヒミズ】

【ヒミズ】
園子温監督
染谷将太、二階堂ふみ、渡辺哲、吹越満、神楽坂恵、光石研、黒沢あすか、でんでん、窪塚洋介出演
2011年製作

 監督は園子温さん。「愛のむきだし」や「冷たい熱帯魚」など話題作(問題作?)を数多く生み出しています。本作は古谷実の同名漫画を原作にして作られました。染谷将太さん、二階堂ふみさんのW主演で、ヴェネチア国際映画祭でマルチェロ・マストロヤンニ賞を二人揃って授賞しています。撮影途中に東日本大震災が起こり、園子温監督は急遽台本を変更、ラストも原作とは違うものになっています。

【あらすじ】
 池のそばの貸しボート屋を営む家で暮らす中学3年の住田の夢は「普通の人生を生きてまっとうな大人になること」でした。母親と二人暮らしで、父親は借金まみれで住所不定。それでも自分はギリギリ普通だと思う住田は学校に通い、貸しボートの仕事をして淡々と暮らそうとしますが母親は別の男を連れ込んで挙げ句の果てに住田を置いて家を出てしまいます。父親を追う借金取りは住田に肩代わりしろと乗り込んでくるし、ふらっと戻る父親は酒に酔い、住田に詰め寄りこう言います。「俺はよう、お前、要らねえんだ」
追い詰められた住田は去っていこうとする父親の後ろ姿に、近くにあったブロックを手に取り父親の頭から降り下ろします。住田は普通への夢を断たれ、絶望してわずかな残りの人生をせめて世のため人のために使おうと一本の包丁を紙袋に入れて町を彷徨い歩きます。


【みどころ】
 不遇な住田の周りにはたくさんの人が出てきます。二階堂ふみ演じる同級生の茶沢さん、震災後家を失いボート屋のそばにテントを張って暮らす、住田を慕う面々、そして借金を取り立てるヤクザでさえも。住田には強い意志がありました。普通の人生を生き、普通でまっとうな大人になること。どんなに不遇でもまっとうであろうとする住田の元に集います。子どもの純粋で真っ直ぐな思いを、自暴自棄になる住田を見守ります。大人としての子どもへの想いがしんしんと伝わります。
 窪塚洋介さんも出てますがとてもキャラクターの合う役どころで良いです。
 震災後に作り替えたラスト。劇中に出てくるある言葉が意味を変える、素晴らしいラストシーンは必見です。


【この映画にまつわる個人的コラム】
 園子温監督の撮る映画はとても幅広くこれまでに観たことのないような作品が多いです。
 私は何度も観たくなるのは「冷たい熱帯魚」で、この作品の吹越満さんは最高です。奇抜な作品が多いのですが、キャラクターに共感してしまうのはなぜでしょう。現実に生きる人間の心理を軸にして、突き抜けるぐらいの突飛さと皮肉で描く爽快感。それが園子温監督の魅力だと思います。
 「希望の国」や「ひそひそ星」など比較的普通?な作品もあるんですけどね。それもまあひと癖、ひと工夫あってとても良いんです。

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