純「みんな知らん曲は乗れへんて言うねん。」
ヒッピー「ほんなん、今売れてる歌かて、あれやで。最初は誰も知らへんかったんやで。」
純「そうやけど。」
ヒッピー「ぼんなあ、音楽ってなんやと思う?・・・音楽は武器や。通信空手よりもなあ、強い武器やで。」
ヤンキーに苛められる文化系男子の純は、いつかヤンキーをこらしめることを夢見て通信空手と妄想に勤しみますが、全く強くもなれないし町でカツアゲに遭った時にもそのヤンキーに助けられる始末。けれどもユースホステルでの恋や友情、いろんな人に出会っていろんな人生を知った、ひと夏の思い出は純を少し大人にしました。思い切って出た文化祭で得意のギターをかき鳴らし、純はヤンキーに認められるのです。音楽という武器で文科系男子はヤンキーと渡り合い、音楽という共通言語で仲良くなっていくシーンはとても胸を打たれます。
それからこの作品の魅力はなんといっても関西弁。みうらじゅん氏が生まれ育った京都が舞台なので、バリバリの関西弁。主役の渡辺大知は神戸生まれ、くるりの岸田さんも京都出身なので関西弁トークはとても自然ですんなり耳に入ってきます。純の両親役を堀ちえみさん、リリー・フランキーさんが演じていますが、このおふたりが非常に良いです。福岡出身のリリーさんも関西弁を練習したそうです。雰囲気ある関西弁をぜひ聞いてみてください。
青春時代、男の子の苦悩や喜びをいっぱい詰めた瑞々しい作品です。思わずふふっとこそばゆい感じに笑ってしまうシーンはどんな人にでも1つはあると思います。
【この映画にまつわる個人的なコラム】
バンド・黒猫チェルシーのボーカルである渡辺大知さんの役者デビューの作品で、この出演以降、バンド活動の傍ら、ドラマやCMに出るようになりました。バンドで奏でる音楽や好きな映画も若さの割には渋くてこだわりのありそうです。役者として、バンドマンとして、活躍中の渡辺さんにぜひ注目を。本作の中でうっぷんを溜め続けて吐き出す、文化祭でのギターパフォーマンスは爽快で、可愛い顔した渡辺大知さんの毒っけをよく表していて、さらにチャーミングです。
そしてやっぱり峯田さん。峯田さんは隠岐の島ユースホステルの宿舎の従業員の「ヒゲゴジラ」役で、ユースに来た若者を導きます。過去に学生運動をしていた経験を持ち、熱い思いを燃焼させた大人がまだ過去を持たない若者たちに語りかけます。
「さよならだけが、人生でしょ」
寺山修二の言葉をさみしそうにつぶやくシーンもありますが、純との別れの日、彼は叫びます。
「さよならだけの人生じゃ、つまらねえぞ。別れの後にはな、出会いがあるんだ。また会おう!」
そして離れていく純たちを乗せた船に向けて、見事なダイブ。海の中から手を振るヒゲゴジラ。この熱さ、峯田さんにしかできない体を張ったメッセージは心にストレートに届きます。
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