【アイデン&ティティ】
田口トモロヲ監督
峯田和伸、麻生久美子出演
2003年製作
俳優業もこなす田口トモロヲさんの初監督作品です。みうらじゅん氏の漫画を原作に、脚本は宮藤官九郎が担当しています。主役に銀杏BOYZの峯田和伸。この作品が撮られた同年、GoingSteadyというバンドを解散、銀杏BOYZとして活動を始めています。ミュージシャンなのに今やNHKの朝ドラに出演、紅白に俳優として出演してしまった彼の俳優としてのキャリア始めです。
【あらすじ】
時はバンドブーム。上京したメガネにアフロの中島がギターを担当するバンド「スピードウェイ」はブームに乗ってメジャーデビューを果たします。女性ファンもつき、デビュー曲も売れ、バンドとしては好調のように思われましたが、中島は自分がやってきたロックがブームに乗って流されていく違和感から、自分の在り方に危機感を持ち始めます。自分のやりたいロックとは?疑問を持ち続けながらも平和な時代に生まれた自分を嘆きつつ曲をひねり出す日々。大学時代から付き合う彼女がいながらもファンの女の子と遊んでは後悔と罪悪感に苛まれたり。
そんな時、中島が暮らす高円寺のアパートにボブ・ディランらしきハーモニカ吹きの男が現れ、頭の中に彼の声が聞こえてきます。その姿は中島以外には見えません。
「どんな気がする?誰にも知られない気分は?」
もてはやされたバンドブームはあっという間に去ることになります。中島の思う「本当のロック」を求めて中島はもがきます。そしてバンドは新たな局面を迎えます。
【みどころ】
みうらじゅん氏が経験した昭和のバンドブームが背景になっているので懐かしい雰囲気があちこちに感じられると思います。ファッションや懐かしのバンドにも注目です。
そしてキャストが非常に豪華です。田口トモロヲさんはキャスティングをするときにひとつだけ条件があると話していました。それは「やさしいひと」だったそうです。トモロヲさん自体、バンドをやっていたそうで、バンドメンバーには音楽経験がある人が選ばれました。中村獅童、マギー、大森南朋、そして峯田和伸。峯田演じる主役の中島の彼女役に麻生久美子。脇を固める俳優陣もすごいです。中島の両親があき竹城、塩見三省。岸部四郎や大杉漣も夢見る若者と対峙する大人として競演しています。
中島の成長の中で彼女との恋愛関係は重要なものに描かれています。タイトルの「アイデン&ティティ」が示す通り、中島のアイデンティティが彼女とふたりで成り立つもの、としています。理想の姿を求めて紆余曲折の中島に理解を示す彼女の言葉や眼差しは、幻想のように中島の前に現れるディランが残す言葉と共に、時に惑わせ、中島を導きます。ロックに限らず何かを求めて奮闘する切なる思いは普遍的で共感できる作品だと思います。
ボブ・ディラン本人に脚本を読んでもらって許可を得たそうで、ディランの言葉と音楽が効果的にちりばめられています。今やノーベル賞詩人となってしまったボブ・ディランの言葉にもぜひ今一度注目してみてください。
【この映画にまつわる個人的なコラム】
この作品で峯田さんを好きになりました。彼のバンド、GoingSteaeyの存在は知っていましたが、役者もやるミュージシャンでこんな人はいませんでした。表現力に富む人でバンドは超人気だし、唄を歌うだけで十分彼は魅力的だしカリスマ的に人を惹き付けてきたはず。なのに彼は役者の道も受け入れて新たな表現方法を手に入れました。彼は常に、客のためには生きてないし自分のために生きていてきっとたくさんの良い人、「やさしい人」たちの中で今、やるべきことをやっているんだなあと思います。
「やらなきゃならないことをやるだけさ だからうまくいくんだよ」本作ラストの言葉です。
ディランの「人は自分の属さない場所へ行ってはいけない」という言葉どおり、「やりたいこと」が「できること」でそこを色々間違ったら必要ない苦労をするんだろうと思います。素直に生きたいものです。。(・・;)
東京から神戸に戻ってきたときに観た映画でとても思い入れのある作品です。麻生久美子さんがとっても可愛くて、、理想的でまぶしいぐらいです。
というわけで邦画編スタートです。基本的には五十音順で行こうと思いますが繋がりがあれば積極的に外れて行こうと思っています。お付き合いいただけると幸いです。
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