【母なる証明】
ポン・ジュノ監督
キム・ヘジャ、ウォンビン、チン・グ出演
監督は韓国のポン・ジュノ。独特なユーモアをところどころに滲ませてシュールな演出が面白い監督さんです。
原題の마더(マド)はmother、母親を意味する単語です。邦題は「母なる証明」。
主人公は主役の漢方薬の店を営む中年女性。名前は知らされませんが彼女の物語です。彼女は一人息子の知的障害を持つトジュンと二人暮らしをしていました。自分が怪我をしていても息子の危機に飛んで行く、彼女はトジュンを心から大切にしていました。
ある日、村に殺人事件が起きてトジュンが容疑者として警察に連れていかれてしまいます。殺されたのは女子高生。純朴で虫も殺せないようなトジュンに殺人なんてできるわけがない、彼女は何としてでも容疑を掛けられた可哀想なトジュンを釈放してもらうため、友人のジンテの助言を得て女子高生の身辺調査に乗り出します。
平和だった親子の身に起きた殺人事件。母親はその事件の全貌を暴こうとします。可愛い一人息子のために奔走しますが暴かれたのは息子トジュンとの関係、隠された秘密でした。息子を守ろうとする母親が一人の人間としての息子の姿に直面する時、母親も一人の人間としての自分の姿を問われるのです。ふんわりと見える中にも真剣な問いかけを感じるラスト。事件の真相にじわじわと近づいていく経緯もテンポ良くコミカルにも描かれていて楽しんで観られると思います。
【この映画にまつわる個人的なコラム】※読まなくても可。笑
このコラムには敢えて原題を載せているのですが、私は邦題の原題とのちがいに興味があります。この作品の原題は「母親」。英題も“mother”だそうです。邦題は「母なる証明」。映画を見終わって、伝えたいだろうことに想いを馳せるとき、私は邦題の方がよく表現しているように感じました。
証明という言葉が何を意味するのか。見終わった時に複数の意味があるように思います。母親として息子を救う、という事件の真相や母性の証明ということと、作中の、起こってしまった出来事を介してこれから探してゆく母親としての存在の証明。
タイトルで観る側のスタンスが決まってしまう面はあると思いますが、この作品については流れや伝えたいことを損なうものではなく、深く探っていけるような姿勢を持てる邦題だったんじゃないかなと思いました。
みなさんならどう感じられるのでしょうか。
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