【奇跡の海】
ラース・フォン・トリアー監督
エミリー・ワトソン、カトリン・カートリッジ出演 1996年製作
監督はデンマークのラース・フォン・トリアー。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」が衝撃的でした。「ドッグ・ヴィル」という映画も斬新でした。村が床に書かれた線だけで区切られ家々が存在する設定です。見ている内に頭の中で想像の村が出来、ニコール・キッドマンやポール・ベタニーなどの登場人物たちが生活し始めます。とても不思議で面白い設定の映画です。
創意溢れる挑戦的な作品の多い監督さんですが、この作品もかなり挑戦レベル暴騰。
エミリー・ワトソン演じるベスという女性が主人公。ベスは信心深く慎ましい小さな村で過ごす中で、ヤンという男性に出会います。ヤンは北海油田の石油コンビナートに勤める労働者でした。ベスは初めて愛したヤンを深く愛し、神に祈りを捧げる日々を送ります。
ある日、ヤンが束の間の休日から油田に戻ります。離れ離れの新婚生活に耐えきれずベスは早く自分の元にヤンを返してくれるよう神に祈ります。そうすると祈りが届いたかのようにヤンが油田で大事故に遇い、怪我をすることでベスの元に帰ってくることになったのです。ベスは自分の祈りに嘆き苦しみ、自分を責めるようになります。寝たきりになったヤンの看病を献身的に行うベスに、下半身付随を嘆くようにヤンは難題を囁きます。他の男と関係を持ち、自分との情事のように聞かせてほしい。それでふたりの愛を確かめられる、と。ヤンの希望を聞くことがふたりを救うことだと覚悟を決めるベスの行動は、教会からつま弾きに遇いながらも暴走し始めます。
ラース・フォン・トリアー監督はどんな作品でも「正しさ」を描きます。世の中の誰にでも通じるような「正しさ」ではなく、とても個人的な、その人が生きるために必要な「正しさ」です。
この映画の中でもベスの「正しさ」が描かれています。とても極端な形ですが、大切な人のためにその愛を信じて盲進しようとすること自体は、勇気のない者には笑うことなんてできないことだろうと思いました。
ぜひ観て、困ってください。この突き抜け加減。
【この映画にまつわる個人的なコラム】※読まなくても可。笑
ベスのお姉さん役で出ているカトリン・カートリッジという女優さん、とても好きです。マイク・リー監督作の常連でもあり、厳格な顔立ちの素敵な存在感でぜひ注目してみてください。
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