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【万引き家族】
是枝裕和監督
リリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林、松岡茉優出演
2018年製作
 監督は是枝裕和さん。本作で2018年度カンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞しました。同映画祭で「そして父になる」という作品で2013年度の審査員賞を受賞しています。


【あらすじ】
 東京の下町、一つ屋根の下で暮らすある家族のお話です。日雇いの土方の仕事をする治とクリーニング業に勤める信代、風俗店で働く亜紀、学校に行かずずっと家にいる祥太、祖母・初枝の五人暮らし。不安定な収入源で頼りにしているのは初枝の年金と治と祥太の万引き。貧しいながらも五人は楽しく、満たされた生活を送っているようです。ある晩、近所で虐待を受けて放置されている女の子を治が見つけ、連れて帰ってきます。身体中にアザのある女の子を「ゆり」と名付けて家族は受け入れます。ゆりは少しずつ笑顔を取り戻し、治と祥太に万引きを教え込まれていきます。満たされているはずの生活の中で、不安と疑問を覚え始めるのは祥太でした。能天気に万引きや窃盗を繰り返す治の隣で、その行為と自分の中で芽生えて大きくなり続ける不安や疑問を幼い祥太なりに解釈しようとし始めます。


【みどころ】
 カンヌ国際映画祭でパルムドールという大賞を獲る。これは非常にすごいことで、よく練られた脚本と印象的な画の撮り方、実力ある俳優陣、文句の付け所がない作品だったと思います。家族の設定としても非常に練り込まれて作られていると思います。
 特に俳優さん。存在だけで成立してしまうような樹木希林さんにリリー・フランキーさんの悲哀溢れる優男っぷりと安藤サクラさんの現実味のあるアンニュイな雰囲気。主役級の演技力を持つ三人が下町の貧乏長屋という設定の中でそれぞれが個性を消して場に溶け込んでしまえばもうそれだけでこの映画は成功と言えそうです。そして祥太演じる子役さんは目ヂカラがあって「誰も知らない」に出ていた柳楽優弥さんのようでした。
 審査員のケイト・ブランシェットに私の泣く芝居が変わっていたらサクラの真似だと思って、とまで言わしめた安藤サクラさんの涙のシーンは必見です。それ以上にリリー・フランキーさんのダメ父さんっぷりにはこちらが泣くしかないシーンなのではありますが。


【この映画にまつわる個人的コラム】
 社会的な不遇の中でも、経済的な問題や形骸的な家族の形を度外視できたとき、その状況下にあるもので作り上げるしかなかったとしても、家族の幸せがきちんと個人の幸せを満たすものであるならその家族はちゃんと機能していると言えるんだと思います。でも家族は社会とは切り離せないものだということも事実。そんなとき、その家族を守るものはやっぱり大人であるべきだと思うのですが、この家族での大人は社会的な場でも弱い立場で、特にリリー・フランキーさん演じる「父」の治は自分の弱さから抜けきれない、自分しか守れない大人なのでした。それでもそんな治の弱さは無視できないものと、是枝監督は最後まで丁寧に描き切っています。リリーさんの熱演には胸が詰まり、いつまでもその佇まいが心に残りました。

 それから、虐待はもちろん許されないこと。ですが、悪を悪だとするだけで終わらせるのではなく、血が繋がっているからこその家族の苦しみを是枝監督にはぜひいつか描いていただきたいと思います。

 色々感じたことの多い作品でレビュー書いてみましたが全然まとまりませんでした、、すみません。もっと書きたいことがありますが百聞は一見にしかず、ぜひ観てみてください!

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