監督はポーランド出身のロマン・ポランスキー。第二次世界大戦が勃発する1939年から1945年の終結の年まで、ナチスドイツによるホロコースト(ユダヤ人の大量虐殺)を生き抜いた、実在するユダヤ系ポーランド人のピアニスト・シュピルマンの体験記を元に描きました。この作品はフランス、ポーランド、ドイツ、イギリスの合作です。監督自身もこのホロコーストの中を逃亡した経験を持つそうです。
1939年、第二次世界大戦が勃発します。ピアニストのシュピルマンはポーランドのワルシャワでラジオの公開録画で演奏を行っている最中にドイツ空軍の爆撃を受け、急いで帰宅し家族と身を寄せ合います。ナチスドイツによるユダヤ人への迫害は1933年から始まっていてエスカレートするばかりで、ワルシャワ市内に設置されたゲットー(ユダヤ人隔離地域)にシュピルマン一家も収容されてしまいます。シュピルマンは友人の助けを得ながらも仕事に就くことができますがある日ユダヤ人たちは列車に乗せられ強制的に何処かへ連れていかれます。シュピルマンは知人であるユダヤ人ゲットー警察の署長によりその列から外れるのですが、絶滅収容所へ送られる家族との別れとなりました。
【みどころ】
家族と別れたシュピルマンはひとり、知人のつてを辿りながら隠れ、生き延びようとします。窓の外からはワルシャワ蜂起が起こり、仲間たちの反発と没落を目にします。なぜシュピルマンは助けられたのか。ピアニストである彼は国の宝でした。守らねばならない、国を伝える大切な資質を持つ人間だったのです。家族と別れなければならなかったシュピルマンは泣きながら町を逃げ惑います。その時のシュピルマンの胸中はいかばかりだったでしょう。廃墟と化したワルシャワの町で潜んでいた彼はドイツ軍の将校、ホーゼンフェルトに見つかってしまいます。お前は誰だ、職業はなんだ。「ピアニストでした」ドイツ語で答えるシュピルマンをピアノのある部屋に連れて行き、ホーゼンフェルトはピアノを弾くことを彼に命じます。ショパンの調べを極上の腕前で奏でるシュピルマンの演奏にホーゼンフェルトは聞き入ります。そして、彼もまたシュピルマンを守るのです。
ホーゼンフェルトに見つかる以前にワルシャワ市内を彷徨っていたシュピルマンはどこからかベートーヴェンの美しいピアノ・ソナタが聞こえた気がします。ピアノのある家で遭遇した二人。その演奏はもしかしたら、ホーゼンフェルトによるものだったのかもしれません。
【この映画に関する個人的なコラム】
もう3、4回は観ていると思いますがこのお正月、家族で映画バナシをしているときに「海の上のピアニスト」と「戦場のピアニスト」がごっちゃになりああだこうだになり、母が「戦場のピアニスト」は観ていないような気がすると言い出すのでじゃあ確かめようじゃないかと借りてきてみんなで観ることになりました。忘れてるだけじゃないんかなぁと思いましたが母は本当に初見だったようです。正月の昼ひなかから観るべき映画なのかどうかは私にはわかりません。
非常に有名な作品なのでみなさん御覧になられたことはあると思いますしストーリーも歴史的背景も深く、私みたいなのが説明すべきものでもできるものでもないと思うので何も語りませんが(?)、戦争映画として他の映画と違いを感じるのはこの作品が徹底的にシュピルマン目線で個人に焦点を当ててこの戦争を描いていて、出来事が全てシュピルマンの見える範囲でしか観ている側も知り得ないようなリアル感があるところだったり、音楽家である彼が戦争に翻弄されながらもひとつのアイデンティティを貫き通しているところでそれは戦争という出来事を圧倒していることのように思うところです。個人が持つ生きるに大切なもの。人によっては国籍だったり人種差別的な意識にある人もいるかもしれません。それでも人の気持ちを穏やかにし、五感に伝わる原始的な表現が世界を平らにすることを祈るような、監督の実体験も通した苦しくも素晴らしい作品のように思います。
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