【ふがいない僕は空を見た】
タナダユキ監督
田畑智子、永山絢斗、原田美枝子、窪田正孝出演
2012年製作
監督はタナダユキさん。小説家、脚本家さんでもあり代表作に蒼井優さん主演の「百万円と苦虫女」があります。デビュー作では自らメガホンを取りつつ主演をこなした実力派です。窪美澄さんの同名小説が原作となっています。
【あらすじ】
助産院を営む母親の女手ひとつで育った高校生の卓巳。ある日友人に着いていったコミケのイベントでアニメ好きの里美と出会います。なんとかのなんとかというキャラクターに似てる!と言われた卓巳は誘われて里美の家で会うようになります。里美と仲良くなりコスプレして遊んでいるうち情事に及ぶようになりますが里美は主婦。それを知りながら不倫関係となります。後ろめたく思うのか里美は卓巳が帰るときにお金を渡していました。卓巳は快楽に溺れた時間を過ごしていましたが同級生の女の子に告白されて不健全な里美との関係に終止符を打つことに。しかしある日、ホームセンターで赤ちゃん用品を眺める里美を偶然に目撃してから卓巳は里美のことが頭から離れなくなります。卓巳と里美は再び密会を重ねますがある時夫にバレることになり、卓巳は『証拠』写真や動画を学校やネットにばら蒔かれてしまいます。
【みどころ】
原作の小説では章だてされていて、あらすじ以外のストーリーに加えて卓巳の友人・良太、そして卓巳の母・寿美子の目線でもそれぞれのエピソードが語られています。それを映画にまとめているので少しつながりが分かりにくいところもありますが最後まで見るとまるっと包み込まれるような大きなテーマを持つ作品だと思います。
アニメ好きの主婦に田畑智子さんがはまってます。アニメ声も出せて普通の若い主婦にも見える普通っぽさが、存在にリアル感を持たせています。卓巳の母・寿美子に原田美枝子さん。助産師として日常逞しく従事して息子の頼りない行動にも動じず叱咤激励する母の姿が素敵でした。それから卓巳の友人の良太に実力派として頭角を現す窪田正孝さん。じっと見据えるような目が印象的です。
「性」をテーマにして各エピソードがまとめられています。人間の、というより動物としての人間の性について考えさせられるテーマです。原作も合わせて読んでみると面白いと思います。
【この映画にまつわる個人的コラム】
機械にはないような性愛という人間がもつ厄介な愛情を真っ向から描いた作品だと思います。主人公の実家を助産院としていることからも、生まれた命、生まれた性をありのままに受け止めて肯定も否定もしない姿勢があるように思います。すごく好きな作品です。
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