【舟を編む】
石井裕也監督
松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョー、小林薫出演
2013年製作
監督は石井裕也さん、最年少でアカデミー賞の外国語映画部門に日本代表として選出されました。さらに日本アカデミー賞で最優秀作品賞など多くの賞を受賞しています。本作は三浦しをんさんの同名小説を原作として映画化されています。
【あらすじ】
玄武書房に勤める馬締光也は言語学部の院卒でその名の通り、生真面目で融通の利かない、コミュニケーション下手な変人として有名でした。38年勤続で辞書編集に徹してきた上司の荒木が退職するということで危機に面していた辞書編集部で後任探しに困っていた西岡に馬締の名前が候補として上がってきます。西岡は部署を越えて馬締に会いに行きます。噂通りの堅物で掴み所のない人物でしたが、馬締は「右という言葉を定義せよ」との質問を難なく答えてしまいます。言葉に対してもこだわりとセンスを持つ馬締を西岡は辞書編集部に迎え入れることにします。
辞書編集部では目下、編集に十年以上を費やすと言われる「大渡海」という辞書の編集に大わらわ。「大渡海」は「今を生きる辞書」として、日々生まれ続ける日本語の解説を目指します。24万語という途方もない量の言葉を精査し続ける地味な作業に辟易する西岡とは違って、馬締は情熱を燃やし始めます。
【みどころ】
堅物で変わり者の馬締を松田龍平さんが演じます。どこか浮世離れしたような雰囲気が役に合っています。馬締が惚れる編集部行き付けの料亭で板前として働く香具矢を宮崎あおいさん。包丁一本、職人として働く香具矢に馬締はお近づきになりたいと恋心を燃やし、先輩の西岡に恋の手解きを受けます。西岡役にオダギリジョーさん。馬締とは対照的に身軽で協調性のある西岡を愛嬌たっぷりに演じています。
西岡の助言を受け、告白を思い詰めた馬締がある日長い長い巻物のような恋文を書いてきて西岡に助言を求めますが、西岡に「戦国武将じゃあるまいし!」と呆れられます。紆余曲折、結局香具矢の手に渡り一体何が言いたいのとちんぷんかんぷんな香具矢に口をパクパクさせてひとこと、「好きです」と言った馬締が可愛かったです。
辞書編集という仕事に使命感を燃やす辞書編集部の魅力的なキャラクターの面々のやり取りが楽しく、言葉について改めて考えさせるような、知的好奇心をくすぐられる面白い作品です。
【この映画にまつわる個人的コラム】
三浦しをんさんは「まほろ駅前多田便利軒」シリーズでも有名な作家さんです。ほんわかとした作風にも内容は緻密に裏を取っているんだろうなと思わせる小説が多く、研究熱心さが伺えます。さらっと読めますが何度でも読ませるような、力量のある作品を書ける作家さんだと思います。原作になった小説には「馬締の恋文」全文が巻末に掲載されており、西岡のツッコミ入りで面白いです。原作もぜひ。
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