【人のセックスを笑うな】
井口奈己監督
松山ケンイチ、永作博美、蒼井優、忍成修吾、温水洋一出演
2007年製作
監督は井口奈己さんという女性の方で、撮り方に特徴がある監督さんです。カットをなかなか出さず長回しで役者さんの自然なやり取りを大事にしているそうです。原作は山崎ナオコーラさんの同名小説です。デビュー作で2004年に文藝賞を受賞しています。原作の、ぽつぽつとしたセリフや空気感は本作の監督さんの作り方にぴったり合っていると思います。胸が苦しくなるようなかわいらしい恋愛のお話です。
【あらすじ】
礒貝みるめは美術学校に通う19歳。友人の堂本とえんちゃんとキャンパスライフを送っています。ある日みるめ達の学校に新任講師としてユリがやってきます。ユリは担任の山田先生と同期の39歳。リトグラフを教えるユリにモデルをやらないかとみるめはユリのアトリエに誘われる。とても自由奔放で少女のような幼さを残すユリに惹かれていくみるめ。みるめに密かに思いを寄せていたえんちゃんはよからぬ雰囲気を察知し、膨れっ面です。
ある日ユリが学校を休んだ日、ユリの実家に行くと猪熊さんという優しげな男性が迎えてくれました。それはユリの夫でした。
【みどころ】
二人のシーンの絡みもいいですが、一人の長回しのシーンもとても良いです。ユリが既婚者だと知った後、松山ケンイチさん演じるみるめが連絡を断とうと自分の携帯電話を溶接して触れないようにしてしまいます。着信があって慌ててみるめは手で引っ剥がそうとして手を怪我します。苦しい思いが伝わる良いシーンです。
蒼井優さん演じるえんちゃんのひとりシーンも良いです。ユリと二人で話したことをきっかけに誘われたユリの展示会で置いてあったウェルカムお菓子を黙々と平らげるシーン。ライバルにしては張り合いのないユリと、既婚のユリを好きになってしまった苦しさに悩むみるめとの間で、何と戦っているのかわからなくなるえんちゃんに共感してしまいます。髪の長い頃の蒼井優さん。とてもかわいいです。
そして若者を惑わす39歳のユリを演じるのは永作博美さん。大柄で長身の松山ケンイチさんの横で子リスのようにチョコチョコ動き回る様子は自然を生きる小動物のようで、ひとり肉食系の存在を発揮しています。みるめとの逢瀬の時は携帯を切ってたりして後ろめたさは感じている様子です。役者さんたちがとても自然体でイキイキ非常に魅力的です。
恋の時間は短く、ユリとみるめの関係はパッと燃え上がり、すぐに火は消えくすぶり続けます。二十歳を迎えるみるめの切ない初めての大人の恋に、苦しかった恋の経験なんかを思い出しながら観てみてはいかがでしょう。
【この映画にまつわる個人的コラム】
原作の山崎ナオコーラさんの小説も読んでみました。小説というより詩のような行間を読ませるような文章で心地よい作品でした。
松山ケンイチさんがとてもよかったです。前半は恋のドキドキワクワクに笑顔溢れていましたが、後半は恋に破れ、やつれたデスノートのLにしか見えないシーンもありました。ほのぼのした感じがいいですねえ。
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